2006年12月26日
2006年12月26日
魚屋
絵葉書ばかり売ってる町がありました。
そこには、父が遺した大昔のドイツの城のと、まったく同じ物がありました。
涙がでました。
泣いてばかりいました。
すると、狭い通りの絵葉書屋の爺さんが、通りで魚を焼いていました。
「食べていくか?」
と爺さんが優しく言うので、
遠慮なく戴いたら、金を取られた。
なんて甲斐性のない爺さんだ。
でも、魚はうまかった。
まっすぐ行けば駅に着く。
2006年12月27日
ツバメの街
ある男を尾行していた。
今、駅のホームを歩いている。回転寿司屋を2軒通り過ぎる。
駅も変わったなぁ、
と感心していると男はトイレの矢印の方向へ消えた。
私は女だ、中へは入れない。
トイレの前で待とうかと考えていたら、
男はその奥のエレベーターに乗って下へ降りていってしまった。
今いるホームからは、上にしか行けないはずなのに・・・
2006年12月28日
2006年12月29日
スプーン
彼女はキャンディ・ショップの店員だ。
クリスマスの1ヵ月前くらいから、忙しすぎて
ほとんど会えなくなる。
でも
そもそも僕と彼女は、
近くになったり遠くに感じたり、
位置なんて
まるで最初から存在しないみたいな
ところにいる。
とめどなく流れるコトバ。
とうとう見えなくなってしまった。
それでも目を凝らし、
その粒をスプーンですくうんだ。
2006年12月30日
照らす明かりは
私は、川沿いのアパートに一人暮らしをしている。
あの日は、風邪を引いて仕事を休んでいた。
トイレに行った時、ふっと窓を見ると、川の向こう岸の階段に、
人間に噛まれた幽霊が200人くらい集まってるのが見えた。
その幽霊たちの音をBGMに、うんこをした。
2006年12月31日
消滅
大きなシャワールームで
昔の男とセックスしていた
すると右乳首がとれた
しかし中から爬虫類の様に
新しい右乳首が出てきた
すると今度は胸がどんどん小さくなる
このシャワールームには
いろんな人が入ってくる
待合室にでもなってるのだろうか?
そして、
男女同じなのは何故?
また さっきの男が入って来た
なくなった乳首が気になって仕方ない
2007年01月01日
おなか
「ねぇ、おなか見て・・・」
彼は、
話してはいけないルールなのに
言ってしまった。
見ると
彼のおなかは大きくなっていた。
「・・・・・。」
私が何も言えずにいると、
「静かなところで話したい。」
と彼は言って、
私の手を取り連れ出した。
そして、
「僕は妊娠した。」
と言ったんだ。
2007年01月02日
マンホール
歩いていたら、
突然目の前が真っ暗になった。
そして、
湿った場所で尻を打った。
遠くで、
サイレンがなっている。
早いなぁ
もぅ助けにきてくれるのか、
と考えていたら
通り過ぎて、行ってしまった。
どこにいるのだろう?
どこからか水が流れてきて、私も流された。
でも予想外に、桃太郎の冒頭に出てくる
どんぶらこ
どんぶらこっこ
といった具合に流れていった。
随分多くの時間が流れた。
3週間ぐらいだろうか?
時間をたどるのは難しい。
とにかく、同じ場所へ戻ってきた。
ちょうど、誰かが落ちてきた。
2007年01月03日
2007年01月04日
未来のおつり
自転車で、
ストーブ用の灯油を買いに行った。
私は病み上がりであることをすっかり忘れていた為に、
帰りは重くて自転車に乗れなかった。
それで、
思い切ってガソリンスタンドの人に
「車を貸してください。」
とお願いしたら、
軽トラを貸してくれた。
それから
灯油代を払いに行ったら、随分まけてくれた。
喜んで車の所へ戻ると、
車がなかった。
ここじゃなかったかもしれない・・・
捜し回ったが、
やっぱりなかった。
諦めて、
乗ってきた自転車の所へ戻ったが、
その自転車もなく、
買った灯油もなくなっていた。
そして、
はじめから
そうであったかのように
ガソリンスタンドもなかった。
2007年01月05日
未来種
ケーキ作りが大好きだ。
でも、
この間から、
何度作っても、
生成り色の幼虫が5・6本入っている。
他人に話すのは
気恥ずかしいが、
僕は
“既婚者お菓子作りサークル”
に入っている。
もちろん、サークルの名前に
“既婚者”
など付いていない。
入ってる者が、
みんな既婚者。
それだけのことだ。
それにしても生成り色の幼虫・・・
初めは見間違いかと思った。
でも、
この間
新しく入った男が、
「動いてる・・・」
と言ったのだ。
2007年01月06日
2007年01月07日
2007年01月08日
踊り場
私は、階段の踊り場に住んでいる。
ここは、日のあたる部屋。
ここで横になっていると、壁にこじ開けた跡を見つけた。
気になって
ガリゴリ・・・
ガリゴリ ガリゴリ
と手でこじ開けた。
すると、その奥には
“踊り場部屋”
があった。
おかしなことをするやつが他にもいたのだ。
2007年01月09日
豆
駅のトイレに入った。
個室を開けると、
和式便器いっぱいいっぱいの大きな豆があった。
見間違いかと思って、
目を擦り、
目を凝らし、
トイレから出たり入ったりして、
何度も見たけど、
それは
やっぱり豆だった。
2007年01月09日
2007年01月09日
2007年01月10日
魚
「これくらいの距離で?」
「それも違う。違うわよ。」
「欲しい!欲しい!滅多にないもん。」
私は深呼吸した。
今あまり調子が良くないから・・・
「また明日にしようよ!」
「あんた、機嫌が悪いわ。何か食べたら?」
「実は私、水の中が好きじゃあないのよ。」
「あんた、おもしろい女だね。あんたと話してると、自分が大嘘つきみたいに思えてくるよ。」
2007年01月11日
穴
ある日、飼っていた大きなナマズがいなくなった。 調べによると、何者かの手で、例の浅くなった大河で逃がされたという。
そこで、その大河へ人を大勢連れてやってきた。網のない網で必死に捕まえ、水槽に戻すが何度やっても駄目だった。
すると、近くにいた爺さんが、
「一度出た住みかには戻らんよ。」
と言った。
それなら・・・
「穴を掘れ!」
と皆に叫んだ。
それでも、なかなか上手くいかない。そして、穴はどんどん深くなっていった。
2007年01月12日
蛸男
帰宅時間の混み合った
駅の改札付近の階段で、
手摺りを手の甲で触る。
前を行く人のリュックを揉み、
そのチャックで遊び、
尻を拭き、
靴に当たるように足先を振る。
後ろの人の手を軽く摘み、鞄と靴を手で、
スカートの裾を足で遊ぶ。横の人の服と買い物袋をガサガサ触る。
同時にだ!
そして誰も気づかない。
2007年01月13日
電話
電話が鳴っている。
でも、家の電話でも、今使ってる携帯電話でもなかった。
それで、音を辿っていくと、洗濯機がなっていた。
何なんだ?
とにかく、訳のわからないまま
いろんなボタンを押しまくっていると、
突然洗濯機から、
「あんた!
いつまで荷物を預かってりゃいいんだ!」
と随分怒った老女の声がした。
誰だろう・・・
わかった!
学生時代に、
夢のなかで住んでた安アパートの管理人のお婆さんだ!
2007年01月13日
2007年01月14日
村
私は、土で造った家が数件並んだ砂漠のなかの小さな村に住んでいた。
ある日、物凄く大量の飛ぶ刺す蟻が現われた。
それは、全長5cm以上の信じられない大きさで、アメリカ空軍機並みのスピードで飛んでいた。
そこで、私たちは地下に住むことにした。
掘って、掘って・・・・・
地下に小さな村を造った。
そこは、とても素晴らしい村になった。
今では地下に、たくさんの村がある。
2007年01月14日
2007年01月15日
王子
電車に乗って、椅子に腰掛けた。
向かいに座っている中年女性が、サンダルから小指だけをハミださせ、スケッチブックを睨み付けていた。
突然、その女性は全体が無色透明の自分の鞄から、アルミ製の容器に入った12色入りの色鉛筆を取出し
「王子200」
とメモして、空にかざした。
2007年01月16日
世界は陸続き
電車に乗れば、どこへでも行ける。
この間、友だちと近くに行くような格好で、電車に乗った。その車内で、
「あれが淡泊で、よく面倒なことになるのよ。」
と相談していたら、近くに座っていた中年男性が降りてしまった。
彼は、日本語が理解できていたのだろうか?
それから、友達の側に座ってる若い男がボディランゲージで、
何をしゃべってんのか?
という風に巧く聞いてきたけど、内容を詳しく教えるのは面倒だから、
「ジャパニーズ」
とだけ言った。
すると、英語で色々聞いてきた。
ヨーロッパの人やって!
って話をしてたら、
おもちゃみたいな街が見えてきた。
2007年01月17日
たま
「今日、うちで鍋でも食べないか?」
と言うので遊びに行った。
二人で支度していると、
「ポン酢を切らしてるから買ってくる。」
と言って、その人は出掛けて行った。
野菜を切りながら待っていたが、
すぐ切り終わってしまったので、
勝手に部屋を見て回ることにした。
この家は、思った以上に広かった。
ある部屋に入ると、
部屋の真ん中に
脳みそ
のようなものがあった。
その中を蛍光の緑色した
“たま”
が少しづつ動きながら光っていた。
2007年01月17日
2007年01月18日
きらびやかなシャンデリア
家族っていいなぁ・・・とぼんやりしていたら日が沈みかけてきた。
それは鳥おじさんが、鳥サイズの巨大な蝶に戻る時間です。
今が変わらなくても、このままを受け入れるだけで楽になるなんて知らなかった。
もう少し、若い頃に知りたかったなぁ。
あちこち飛び回っていたら、心打つ歌声が聞こえてきた。