四つの窓
平日の昼間に、空いた電車に乗っていた。各駅停車だ。
ある駅に着くと、おばさんが乗り込んできて、ガラガラに空いてるのに、わざわざ私の隣に座って、
「あんた、開けてない窓があるよ。」
と、呪文のように言った。
「え?」
と聞き返すと、
「人には四つの窓があってね。
一つ目は、自分も他人も知ってる自分。
二つ目は自分は知ってるけど、他人は知らない自分。
三つ目は、自分の知らない、他人が知ってる自分。
四つ目は、自分も他人も知らない自分。
あんたは随分あけてないね。辛いだろうよ。」
と言って、
おばさんは嘘泣きをした。
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